起業家インタビュー
「看護ベンチャー」に関する研究の過程で行った「女性起業家へのインタビュー」での話を、
ほんの一部ですがご紹介します。
Aさんの場合

Aさん

私は、起業するという感覚はなくて、気がついたら起業していたんですよ。大学を卒業して、どこかに勤めるより、自分で何かやっていこうと思って。その時にフリーペーパーを作って、フリーの仕事をして、名刺を配ってまわっていました。ご縁があってお仕事をいただいてやっていただけなんです。仮に屋号はあったんですけど、起業したら税務署に届けなきゃいけないっていうのも知らなくて、11月くらいにいろんな人から教えてもらって知って、確定申告しなきゃいけないということで、あわてて4月1日に法人化しました。会社を大きくしていきたいとは思っていたんですけど。起業という単語になるほどの思いではなかったんです。なんとなく自然に起業してしまいました。

近藤

法人化するにあたって、つまり、会社の設立にあたって、いろんな書類を準備する必要がありますよね。

Aさん 私、会社の登記も自分でやりました。定款も、本を見ながら自分で書いて。いろんな役所も自分でまわったんです。
あれだけの労力と時間とを考えると、プロに頼んでも良かったかなと今では思いますが。ただ、定款を書くことで、会社って社会の中でどういう位置づけで、どういう風に成り立っていて、どういう役所と関係を持って存在しているんだっていうのがすごく勉強になりました。そういう意味では、しんどかったですけど、良かったかなと思いますね。
たった一人の仕事からスタートして、気づいたら地元の多くの人たちとつながりができていて、仕事が入ってくるようになった。会社という形を選ぶこととなり、考えてもいなかった起業家としての人生が20代から始まった。その責任の重さと、従業員の生活を保証する事の困難にぶつかりながら成長している姿が印象的でした。まじめで論理的思考が普段の会話からも伝わってくる経営者です。

Bさんの場合

近藤

今までの経歴で、営業や研究者、そしてまた営業をしたりと、全然違うことをしていると言われませんか?

Bさん

よく言われますね。ただ、自分の中では同じだという感覚なんです。実験も自分で計画を立てますよね。どこに行くか下調べをして、先輩方から情報を得て、営業に出ます。そして言われたことに対してまた準備をして、営業に行って、と、段取りをしたり、計画を立てたり、研究するのと同じだなと思いました。私の中では、なにをするにしても大差ないですね。料理をするにしても計画を立てますよね。全部同じだなと思います。

近藤

研究者で多いタイプは、人と接することがあまり好きじゃないからとか、人と交わらなくていいからという人もいますよね。営業職なんて、人と接する究極じゃないですか。

Bさん

コミュニケーションがどうっていうのは、あまり考えなかったですね。

近藤

営業を楽しくされていたというのは、人とお話ししたりするのは全く苦じゃないってことですね。

Bさん

ただ、最初の頃は営業っていってもどうやってやったらいいかわからなくて、常に営業の方がどういう風な会話をしているのかというのを盗んでしゃべるという感じでした。

近藤 理系・文系と言いますけど、どちらがコミュニケーションがうまいかは個人差があって、わかりませんよね。Bさんの話を聞いていると、理系だから人と接するのは好きではないかも…という固定された考えは捨てた方が良いなあと思いました。
その時に偶然得た仕事を誠実にやり遂げ、その積み重ねで起業するようになった。岡山に戻ってきたら、自分のやりたいことをやる。現在は大学院での講義を受けながら、自分の生活する地域を大切にして成長していました。

Cさんの場合

近藤

会社を始めようと考えたときに、最初に誰に相談したり、話し合ったりされましたか?

Cさん

主人ですね。生活のこととか、娘のこととか、今まで以上に主人の助けが必要になると思ったので。あとは、社会的な面で、やはり私は育児でブランクがあり、男性の意見が聞きたかったというのがありました。

近藤

反応はどうでしたか?

Cさん

最初は、まだ娘が1歳だったので、いきなり事務所を立ち上げてもきっと苦しいから、何か準備として、まあアルバイトでもした方が良いと言われて、専門学校の講師を始めたんです。やっぱりすこしずつステップを踏んでいかないと、信用とか、人のつてもできないと思いました。私は県外から来ましたのであまり知り合いもいないし。

近藤

ご主人は、かなり的確なアドバイスをしてくれたと思いますか?

Cさん

その時は、反対しているのかなと思ったんです。今になって考えてみると、良いことを言ってくれていたなと思いますね。自分ひとりの考えじゃなくて、主人を含めて家族、両親にも相談しましたし、いろんな人の意見をきくことで励まされ、それがエネルギーにもなりました。


県外から引っ越して来て、見知らぬ人たちの中であきらめず、子どもが小さいからとあきらめることなく、自分の考えや信じた道を進む姿には驚きました。そして、家族と誠実に話し合うことで理解してもらうという才能は、会社経営にとっても重要な素質だと思います。